富士山見えるかな?三保松原(みほのまつばら)で散策【静岡市清水区】

世界文化遺産富士山の構成資産の一つでもある三保松原(静岡市清水区)。
とはいっても富士山から三保の松原までは40km以上離れている。
なぜ富士山の構成遺産なのか?
海と松原越しにそびえる富士山という景観の良さから古くから絵画などに描かれており、文化遺産としての富士山の一部と考えられてのことだそうだ。

松原越しの富士山

羽衣伝説 三保松原編

昔、駿河国の三保に一人の漁師が住んでいたそうな。
ある日漁師は松に掛けられた見たこともない美しい衣を見つけたそうな。
漁師がそれを持って帰ろうとしたところ、天女が現れその衣は自分の羽衣であり、返して欲しいと言った。
漁師は、羽衣を纏って舞を見せてくれたら返してあげましょうと言い、天女は漁師の願い通り舞を舞ってみせ、
天に帰っていきましたとさ。

子供の頃、羽衣伝説というのはここ三保松原だけの話かと思っていたが、実は全国に羽衣伝説はあるらしい。
京都の丹後地方では、石に羽衣を掛けて水浴びをしていた天女の羽衣を老夫婦が持って帰り、羽衣をなくし天に帰れなくなった天女が老夫婦の娘となったとか。
鳥取地方の天女伝説では、やはり羽衣を取られ帰れなくなった天女が羽衣を取った漁師と結婚したとか。
少しずつ似ていて少しずつ違うところが、こういう伝承の面白さというんだろう。

このような各地にある伝説では、やれこの地の伝説が最古であるだとか、やれこの地の伝説は他とはこんなに違うとかいろいろ言われ、みんな地元の伝説はこんなにすごいと言いたくなるものだ。
私が思う三保松原の羽衣伝説のいいところは、漁師が舞を見て満足するという紳士的なふるまいなところだ。
天女を妻にしたり、娘にしたりするのが悪いとは言わないが、舞を見て満足し、天女は天に帰っていくというのがほのぼのエンディング好きな自分には気に入った。

天女が羽衣を掛けた、いわゆる羽衣の松は現在三代目(推定樹齢300年)にあたる。
初代は江戸時代、富士山の噴火(宝永噴火)の際に海中に沈んだという。
二代目は樹齢650年以上経ち、樹勢が衰えたため、三代目に羽衣の松の称号を明け渡したということらしい。
ちなみに二代目羽衣の松は実際に見たことがある。
三代目よりも海に面して植わっていた松で、その時は確かに素人目にも樹勢が衰えているのがわかる姿だったが、
二代目襲名時はさぞかし立派で目立っていた松だったのだろうなと往時を偲んだ。

三代目羽衣の松

ここには松だけでなくいろいろな石碑もあるが、フランス人舞踏家エレーヌ・ジュグラリスの碑もある。(画像なし)
エレーヌは能楽『羽衣』を研究し、自らも『羽衣』という演目を創り各地で上演したのだそうだ。
彼女は能楽『羽衣』の舞台となった三保松原に憧れを抱いていたが、来ることは叶わず35歳という若さで亡くなってしまった。
エレーヌの遺志を受け継いだ夫が、彼女の遺髪を持って三保の松原を訪れたことをきっかけに記念碑が建立された。
三保松原には、天女とエレーヌ二人の舞姫の物語があるのだ。

三保と言えば富士山!でも本当に見えるのか?

三保松原が世界遺産富士山の構成資産の一つである理由は、三保の松原から見える富士山を昔から人々が愛し、絵画にもされてきたことだ。
ところが私自身、三保松原に行きそこから富士山が見えたことは数えるくらいしかない。
実際春から秋にかけて富士山が見える確率は、かなり少ないらしい。
春は空が霞みがちでくっきり見えないことや、夏から秋にかけては湿度が高いため富士山周辺に雲ができやすいことなどが原因とのこと。
そのため富士山が見たくて三保松原に行こうと思ったら、季節が重要になる。
ざっくりいうと乾燥して晴天の多い冬が良い。
また静岡県がライブカメラ富士山ビューを設置しており、県内各地からの富士山をリアルタイムで見ることができる。
それを参考にして出かけてみてもいいかもしれない。

御穂神社(みほじんじゃ)から続く神の道もステキ

三保松原から『神の道』と呼ばれるボードウォークが御穂神社(みほじんじゃ)まで続いている。
御穂神社は羽衣伝説にゆかりがあり、天女の羽衣の切れ端が所蔵されているとのこと。
規模は大きくないが、落ち着いた柔らかな雰囲気を纏った神社だ。
夫婦和合・縁結び・交通安全にご利益があるといわれている。
御穂神社も世界遺産富士山の構成資産三保松原に含まれている。
神の道をゆっくり歩きながら羽衣伝説に思いを馳せるのもなかなかいい。
ワンちゃんは松ぼっくりを見つけるほうが楽しいかもしれないが。

富士山が見えなくてもゆったり散策できる

先述の通り、三保松原から絵にかいたような富士山を見ることができる日は少なくそれを楽しみに行った人々はがっかりしてしまうだろう。
だが、三保松原には羽衣伝説もあり、御穂神社から続く神の道も立派な松並木に沿って心地よく歩ける。
松原は松を保護するために囲いがあるが遊歩道が整備されているので興ざめすることはない。
富士山が見えなくても見えていたらこんなふうに見えているのかと想像したり、天女の羽衣や舞を思い浮かべたりしながら歩くととても楽しい。

アクセス

車利用
東名清水I.Cより25分
東名日本平久能山I.Cより25分
駐車場あり (173台)

公共交通機関利用
JR清水駅より三保方面行バス『三保松原入口』下車(約25分)

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